この記事のポイント
- 食品スーパーの客単価は+3.5%、客数は−2.4%(平均)。長く続く「客数より客単価」の傾向が一段と鮮明に。雨で買い物の回数が減り、まとめ買いが増えたとみられる。9月下旬からはレタス・キャベツなど葉物野菜も急騰
- 雨の日が前年より8〜15日増えた関東で客数が大きく落ちた。徒歩や自転車の客が多い都市型の店と、USMHの各社が特に厳しい
- 5連休も、関東のスーパーは雨で恩恵が薄かった。一方で身近な外食チェーンは客数を伸ばした。10月は好天で始まったが、台風30号の動きが注目される
小売・外食100社の月次を毎月そろえている「小売・外食 定点ダッシュボード」から、2026年9月分を読み解きます。10月15日までに9月分を公表したのは70社です。各社の数字はすべて既存店の前年比(前年の同じ月を100としたときの値)で、ここでは前年からの増減(%)で示します。
「客数減・客単価増」が一段と鮮明に
9月の食品スーパーは、客単価と客数の動きがはっきり分かれました。9月分の客数・客単価を公表した14社の平均で、客単価は+3.5%、客数は−2.4%です。
客数が伸びず、客単価で売上を支えるのは、食品スーパーの長期的な傾向です。この1年を見ても、2025年9月からの13か月、客単価の伸びは毎月客数を上回り、客数が前年を上回ったのは2か月だけでした。9月は、その差が5.9ポイントと、この1年で最も大きく開きました。
客単価客数
数値を表で見る
| 月 | 客単価 | 客数 |
|---|---|---|
| 2025年9月 | +2.0% | -0.4% |
| 10月 | +2.6% | -0.7% |
| 11月 | +3.2% | +0.6% |
| 12月 | +1.4% | -0.4% |
| 2026年1月 | +2.8% | -0.1% |
| 2月 | +1.0% | -0.1% |
| 3月 | +0.0% | -0.1% |
| 4月 | +1.0% | -0.1% |
| 5月 | +1.7% | +1.4% |
| 6月 | +1.1% | -1.9% |
| 7月 | +1.5% | -1.0% |
| 8月 | +1.7% | -0.5% |
| 9月 | +3.5% | -2.4% |
出典:各社の月次資料(せんデータ「小売・外食 定点ダッシュボード」で集計)。9月分の客数・客単価を公表した食品スーパー14社
客単価が上がった主な理由は、雨で買い物の回数が減り、1回にまとめて買う人が増えたことだとみられます。食品の値上げが続いていることも重なっています。
9月下旬から、葉物野菜が急騰
9月の下旬からは、葉物野菜の急騰も重なりました。農林水産省の店頭価格調査では、レタスは9月上旬には平年を下回っていましたが、9月28日の週には平年の1.5倍、10月5日の週には2倍を超えました。キャベツは夏から平年より2〜6割高い状態が続き、9月下旬にさらに上がっています。
レタスキャベツにんじんたまねぎトマト
数値を表で見る
| 調査週 | レタス | キャベツ | にんじん | たまねぎ | トマト |
|---|---|---|---|---|---|
| 8/3 | 1.09倍 | 1.28倍 | 1.05倍 | 1.19倍 | 1.23倍 |
| 8/17 | 1.17倍 | 1.64倍 | 0.98倍 | 1.17倍 | 1.28倍 |
| 8/24 | 1.07倍 | 1.38倍 | 0.96倍 | 1.13倍 | 1.31倍 |
| 8/31 | 1.10倍 | 1.26倍 | 0.95倍 | 1.08倍 | 1.34倍 |
| 9/7 | 0.71倍 | 1.20倍 | 0.93倍 | 1.04倍 | 0.99倍 |
| 9/14 | 0.88倍 | 1.24倍 | 0.94倍 | 1.02倍 | 1.03倍 |
| 9/28 | 1.50倍 | 1.43倍 | 0.94倍 | 1.01倍 | 1.11倍 |
| 10/5 | 2.03倍 | 1.56倍 | 0.99倍 | 0.98倍 | 1.00倍 |
出典:農林水産省「食品価格動向調査(野菜)」を加工して作成。全国の店頭価格の平均を、過去5年の平均と比べたもの。8月10日の週・9月21日の週は調査なし
8月は多くの野菜が平年より高めでしたが、9月に入ると、にんじん・たまねぎ・トマトは平年並みに落ち着きました。上がり続けたのはレタスとキャベツです。気象庁によると、東日本の太平洋側は9月の降水量が1946年の統計開始以降で最も多く、日照時間は最も短くなりました(気象庁 2026年10月1日報道発表)。長雨と日照不足が、産地の生育を直撃しました。
ただし、9月全体で見ると、野菜がそろって高かったわけではありません。前年の9月と比べると、キャベツ(+30%)やレタス(+14%)は高い一方、たまねぎ(−16%)、ねぎ(−13%)、にんじん(−12%)、トマト(−10%)は前年より安くなっています。店頭で目立つ葉物の高値は、客単価を大きく押し上げたというより、買い物をためらわせ、客足が鈍る理由をもうひとつ増やしたと見るのが自然です。
野菜の前年比は、農林水産省「食品価格動向調査(野菜)」の9月の各週の店頭価格の平均で比べたもの。
関東、とくに都市型の店とUSMHが厳しい
客数の落ち込みは、関東に集中しました。関東に地盤を置く7社の客数は平均で−3.8%、関東以外の6社は−0.5%です。
関東に地盤を置く7社(平均 −3.8%)
関東以外の6社(平均 −0.5%)
数値を表で見る
| 前年比 | 増減 | |
|---|---|---|
| ベルク | 98.3% | -1.7% |
| ヤオコー | 97.8% | -2.2% |
| 成城石井 | 97.5% | -2.5% |
| いなげや | 97.1% | -2.9% |
| イオンフードスタイル | 95.4% | -4.6% |
| マルエツ | 94.1% | -5.9% |
| カスミ | 93.5% | -6.5% |
| ハローズ | 100.4% | +0.4% |
| ヤマザワ | 100.2% | +0.2% |
| アルビス | 99.6% | -0.4% |
| リテールパートナーズ | 99.3% | -0.7% |
| アクシアル リテイリング | 99.25% | -0.8% |
| アークス | 98.3% | -1.7% |
出典:各社の月次資料(せんデータ「小売・外食 定点ダッシュボード」で集計)。客数を公表していない会社と、首都圏・近畿の両方に地盤があるライフコーポレーションを除く
9月に雨(1mm以上)が降った日は、前年と比べて茨城で15日、千葉で14日、東京で12日、神奈川で11日多くなりました。雨の日は東海や近畿でも増えましたが、関東以外の6社の地盤(北海道・山形・新潟・富山・岡山・山口など)では、増えても数日にとどまるか、かえって減っています。客数の差は、この雨の差とよく重なります。

| 既存店売上 | 客数 | 客単価 | |
|---|---|---|---|
| 関東の7社 | +0.7% | −3.8% | +4.6% |
| 関東以外の6社 | +1.8% | −0.5% | +2.3% |
いずれも各社の既存店前年比の平均。関東の7社はヤオコー・ベルク・マルエツ・カスミ・いなげや・イオンフードスタイル・成城石井、関東以外の6社はアークス・ハローズ・アルビス・アクシアル リテイリング・ヤマザワ・リテールパートナーズ。ライフコーポレーション(客数−3.8%)は首都圏と近畿の両方に地盤があるため、どちらにも入れていない。
徒歩・自転車の客が多い大都市圏では、雨は天敵
都市部の店は、徒歩や自転車で来る客が多く、雨の日は買い物を見送られやすくなります。実際、都市型の店が多いマルエツ(−5.9%)、イオンフードスタイル(−4.6%)、いなげや(−2.9%)、成城石井(−2.5%)に対し、郊外で車の客が多いヤオコー(−2.2%)、ベルク(−1.7%)は落ち込みが小さめでした。ただし、郊外が中心のカスミも−6.5%と大きく落ちており、雨だけでは説明しきれない部分もあります。
USMHの各社は特に厳しい数値
客数の下位3社(カスミ、マルエツ、イオンフードスタイル)は、いずれもユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)の傘下です。同じく傘下のいなげやも−2.9%でした。USMHは10月9日、2030年度までに約100店を閉める方針を発表したと報じられています(朝日新聞「イオン系食品スーパー、100店閉店へ インフレの逆風『想定以上』」)。インフレで仕入れ値や人件費が上がり、買い上げ点数が減っていることを理由に挙げており、今後の動向に注目が集まります。
5連休、スーパーは雨で恩恵薄く。外食チェーンは取り込んだ
9月19日〜23日は、2015年以来となる9月の5連休(シルバーウィーク)でした。ただ、関東のスーパーでは連休の恩恵ははっきり見えません。内閣府の景気ウォッチャー調査(9月)でも、関東のスーパーからは連休中の台風で前年を割り込んだという声が出ています。
一方で、身近な外食チェーンへの雨の影響は小さかったようです。業種別の既存店売上は、ファストフードが+7.0%、麺類・中華が+5.0%で、客数もそれぞれ+1.7%、+3.2%(平均)と前年を上回りました。モスフードサービス(+15.3%)、吉野家(+10.1%)、日本マクドナルド(+10.0%)、元気寿司(+12.4%)が大きく伸びています。景気ウォッチャーでは、個人経営の飲食店から長雨で客が来ないという声が多く、チェーンと個店で明暗が分かれた形です。
数値を表で見る
| 前年比 | 増減 | |
|---|---|---|
| 衣料・雑貨(8社) | 111.5% | +11.5% |
| ファストフード(6社) | 107% | +7.0% |
| 麺類・中華(6社) | 105% | +5.0% |
| ファミリーレストラン(5社) | 104.9% | +4.9% |
| 和食・寿司・焼肉(8社) | 104.8% | +4.8% |
| ホームセンター(4社) | 103.1% | +3.1% |
| カフェ・居酒屋(3社) | 102.5% | +2.5% |
| 総合スーパー(4社) | 101.5% | +1.5% |
| ドラッグストア(5社) | 101.3% | +1.3% |
| コンビニ(3社) | 101.3% | +1.3% |
| 食品スーパー(16社) | 101.1% | +1.1% |
出典:各社の月次資料(せんデータ「小売・外食 定点ダッシュボード」で集計)。9月分を公表した会社が3社以上の業種
衣料・雑貨も+11.5%と好調でした。前年の9月は残暑で秋物の出足が鈍く、ほぼ前年並み(+0.7%)にとどまっていました。今年は東京の9月の平均気温が22.7℃と前年(26.5℃)より4℃近く低く、秋物が早く売れ始めました。
10月は好天で始まったが、台風30号に注目
10月に入って天気は落ち着いています。東京で1mm以上の雨が降ったのは、10月1日〜14日で1日だけでした。好天が続けば、関東のスーパーの客数は戻ってくるはずです。戻らなければ、雨だけでなく、値上げによる買い控えが重なっていると読めます。葉物野菜の高値は10月に入っても続いており、10月の客単価を押し上げる要因になりそうです。
ただ、10月15日には13年ぶりとなる台風30号の発生の見込みが報じられており、今後の進路が注目されます。
各社の数字は「小売・外食 定点ダッシュボード」で、月ごと・業種ごとに見られます。百貨店など、まだ9月分を公表していない会社も、公表され次第追加されます。

