この記事のポイント
- タイ人の延べ宿泊者数(2026年1〜7月)は全国で−3.1%と減ったが、宮城は+131%、山形+85%、青森+74%、岩手+65%と東北が大きく伸びた
- 伸びたのは、タイ・エアアジアXの仙台〜バンコク直行便が飛んでいた2025年12月〜2026年4月だけ。直行便がなかった5〜7月は、東北6県で前年とほぼ同じ(+3%)
- 仙台に降りたタイ人は、冬は山形の雪、4月は青森・岩手の桜へと広がった。ただ、この秋冬は直行便の運休が報じられており、数字が元に戻るかが注目される
タイからの旅行客が、東北で目立って増えています。観光庁の宿泊旅行統計調査で、2026年1〜7月(速報)のタイ人の延べ宿泊者数を前年と比べると、全国では−3.1%(252万人泊→244万人泊)と減りました。その中で、宮城県は+131%、山形県+85%、青森県+74%、岩手県+65%と、東北の伸びが際立っています。

伸びたのは12〜4月だけ
月ごとに見ると、伸び方には偏りがあります。東北6県(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)のタイ人の延べ宿泊者数は、1〜4月が前年の約2倍になった一方、5〜7月はほぼ前年並みでした。
| 東北6県 | 2025年 | 2026年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 1〜4月 | 41,680人泊 | 82,830人泊 | +99% |
| 5〜7月 | 7,070人泊 | 7,270人泊 | +3% |
2026年は速報値。
東北の人気そのものが上がったのなら、5〜7月も伸びていたはずです。1〜4月にだけ何かがあった、と考えるのが自然です。
仙台〜バンコクの直行便が飛んでいた
その「何か」は、直行便です。タイの格安航空会社タイ・エアアジアXが、2025年12月1日に仙台〜バンコク(ドンムアン空港)線を開設しました。週4往復で、東北とタイを結ぶ唯一の直行便です(仙台国際空港のお知らせ)。当初は2026年3月までの予定でしたが、タイの正月休み(ソンクラーン、4月中旬)の需要を見込んで、4月29日まで延長されました(トラベル Watch)。
出入国管理統計で、仙台空港から入国したタイ人の数を月ごとに見ると、直行便の運航期間とぴったり重なります。
今季前年同月
数値を表で見る
| 月 | 今季 | 前年同月 |
|---|---|---|
| 12月 | 3,006人 | 204人 |
| 1月 | 2,454人 | 102人 |
| 2月 | 2,658人 | 216人 |
| 3月 | 3,323人 | 130人 |
| 4月 | 3,629人 | 539人 |
| 5月 | 233人 | 109人 |
| 6月 | 59人 | 67人 |
| 7月 | 62人 | 62人 |
出典:出入国在留管理庁「出入国管理統計」(港別 入国外国人の国籍・地域)を加工して作成
直行便が飛んでいた2025年12月〜2026年4月は、毎月2,400〜3,600人が仙台空港から入国しました。前年の同じ時期は月100〜500人ほどです。直行便がなくなった5月は233人、6月は59人と、すぐに元の水準に戻りました。
実は、同じことは2019年にも起きています。タイ国際航空が2019年10月29日に仙台〜バンコク線を5年7か月ぶりに再開すると(Aviation Wire)、仙台空港から入国したタイ人は11月に2,632人、12月に2,767人と跳ねました(この路線は2020年3月からコロナで運休)。直行便が飛べば来る、止まれば減る。仙台空港では、それが2度起きています。
仙台に降りて、雪と桜へ
直行便で仙台に降りたタイ人は、宮城だけにとどまっていません。1〜4月の宿泊は、東北の各県で伸びています。
2025年1〜4月2026年1〜4月
数値を表で見る
| 2025年1〜4月 | 2026年1〜4月 | |
|---|---|---|
| 宮城 | 14,950人泊 | 38,070人泊 |
| 福島 | 10,950人泊 | 15,300人泊 |
| 山形 | 5,750人泊 | 10,870人泊 |
| 岩手 | 5,110人泊 | 9,610人泊 |
| 青森 | 3,700人泊 | 7,020人泊 |
| 秋田 | 1,220人泊 | 1,960人泊 |
出典:「宿泊旅行統計調査」(観光庁)を加工して作成。2026年は第2次速報値
山形県は1〜3月に前年の1.5〜3.5倍で、冬の伸びが目立ちます。蔵王の樹氷や銀山温泉の雪景色がある県です。タイ人を対象にした「行ってみたい日本の観光地」の調査(2024年、アジア・インタラクション・サポート)では、蔵王が48位から26位に上がり、蔵王の樹氷や宮城蔵王キツネ村も順位を上げていました(調査結果)。
青森県と岩手県は、4月の伸びが大きくなっています。青森の4月は1,680人泊から3,080人泊と、ほぼ2倍です。東北の桜の季節と、ソンクラーンの休みが重なりました。
背景には、タイ人の雪への憧れがあります。日本政府観光局(JNTO)は、タイは一年中暑く季節の変化を感じにくいため、日本の紅葉や雪に強い憧れがあり、12〜3月の雪の季節が訪日の好機だとしています(JNTO 訪日旅行誘致ハンドブック)。直行便が飛んだのは、ちょうどこの季節でした。
この秋冬は運休。数字は元に戻るか
2026年4月には、利用が堅調だとして、この秋も運航すると報じられていました(日本経済新聞)。ところが7月には、中東情勢の悪化による採算面の見直しから、10月の運航再開を見送る方向だと報じられています(河北新報)。宮城県の仙台空港の路線一覧でも、バンコク線は4月30日から運休のままです(宮城県、9月1日掲載)。
直行便がないと、東北は不利になります。タイから東京や大阪に降りて新幹線で向かうなら、東北は北海道や京都、金沢、富士山の周りといった有名な観光地と、同じ土俵で選ばれることになります。実際、直行便がなかった5〜7月は、タイ人の延べ宿泊者数のうち東北6県の割合は2025年・2026年とも1%ほどでした。直行便が飛んだ2026年1〜4月は4.6%(前年同期2.3%)まで上がっています。東京(約3割)、北海道・大阪(それぞれ1〜2割)と比べると、直行便のない東北が選ばれる余地はまだ小さいのが実情です。
直行便がない冬に、東北のタイ人の宿泊はどこまで戻るのか。2025年以前の水準に戻れば、今回の伸びのほとんどが直行便によるものだったことになります。一部でも残れば、この冬に東北を知ったタイ人が、東京経由でも足を運ぶようになったと読めます。2026年12月以降の数字で、答え合わせができそうです。
直行便1本で、地域の外国人宿泊は大きく変わります。都道府県ごと・国籍ごとの宿泊の動きは、「インバウンド・国内旅行ダッシュボード」で見られます。
宿泊は観光庁「宿泊旅行統計調査」の外国人延べ宿泊者数(2026年は第2次速報値)、入国は出入国在留管理庁「出入国管理統計」の港別入国外国人。宿泊者数は小さい値で誤差が大きくなるため、県・月ごとの細かい差は幅を持って見てください。


